退院後の外来診察でやってきた男の子。
なかなかのはにかみやさんなのですが、はつらつと満面の笑顔で、診察室に入ってきました。
たいいんしてから、ちょうしはどうですか?
「だいじょうぶ!」
たいいんして、よかったことは、どんなこと?
「んとねー!、、、テレビとか!」
横にいたお母さん、「ええ、そうなのー!?病院でもさんざん見ていたじゃない!」と苦笑い。
たしかに、家庭の事情で付き添いが難しく、一人で過ごすことが多かったこともあり、
入院中の彼はけっこう長い時間、テレビを見ていたような記憶があります。
でも、男の子は自信いっぱいに、にこにこして答えます。
「うんー!」
そうだよね、きっと、
おうちで家族とゆっくり見るテレビと、病院でひとりで見るテレビは、
ぜーんぜん、違うんだよね。
彼が非日常の中で、まわりからみれば「テレビばっかり見て」いたことの本当の意味に、
ほんとにがんばったよね、とあらためて声援を送りたくなるような時間でした。
おうちのテレビ、ゆっくり、みんなで楽しんでね。
あ、でも、ほどほどに(笑)
(小児科医 山口有紗)
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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