きょうの診察室

Vol.63

先生が凹んでるんじゃないかと思って

どんな仕事でも、うまくいかなかったり、よかれと思ったことが裏目に出たりして、元気がなくなることがありますよね。

ある程度の大きさの病院には、「地域連携室」やそれに準じた機能の部署があります。
そこにはソーシャルワーカーさんや保健師さんなどがいて、患者さんを中心に、病院と社会、家庭、あるいは病院の次の行き先との窓口となってくれる、大切な場所です。

「あれ、学校行けてない?」
「予防接種なにも受けていない、、、」
「お母さん、お父さんに暴力を、と言っていたんだけど」
「家族のお仕事が解雇になってしまったみたい」

わたしは気になる子どもとご家族がいると、すぐに連携室に連絡をしてしまうので、
きっとみなさんのお仕事を相当増やしていると思うのですが、
ほんとうに、よく対応していただき、日々助かっています。

きょうは家庭での養育が難しい子どもとご家族について、
なかなか思うように進まない案件がありました。

よかれと思ったのですが、ご家族につらい思いをさせて責められ、
上司ともかみあわず、そのまま外来で子どもたちの診察をしていました。

すると、ひょっこり。 地域連携室の保健師さんが現れました。
「べつに用はないんだけど、先生凹んでるんじゃないかなと思って、顔を見に来ちゃった」

泣きそうになりました。
たぶんそれこそ、ソーシャルワークの根っこだと思います。
「あなたを気にしているから、できることを探してみたよ」というメッセージ。

外来の合間、
「あんまり優しくすると泣きますよー」と保健師さんにハグをして、
とても勇気が出ました。

ひとりではなんにもできないけど。
素敵な人たちに支えられて、子どもと家族をみんなで支えます。
支える人を支える。自分もそのひとりとして支えられる、
優しさの連鎖の中にいることに感謝。

(小児科医 山口有紗)

山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
https://www.kidsrepublic.jp/pediatrics/today/detail/vol00.html



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<プロフィール>

小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。

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