きょうの診察室

Vol.61

ほんまもんやで、よかったなぁ

せっかくのお休みの間に病院にくるのは、ご家族にとっても、きっとつらいことだと思います。
ある祝日の救急外来。お母さんの言葉がとても素敵で、胸に残りました。

もしもししようね、わ、上手、とわたしが診察をはじめるとその横から、
「○○ちゃん、これがほんまもんの聴診器やで、よかったなぁ、いつも遊んでるやつのほんもんやで、じょうずにしてもらってるやん、すごいなぁ」
と声をかけてくれました。

きっとお母さんにとっては、ほんとはちっとも「よかった」ではないかもしれないけれど、
そこで、「残念な受診」にせずに、「本当の聴診器で診察を受けることができて、いい体験をしたね」と、
事実を子どもにとっての大切な経験にかえることを、助けてくれました。

本当にすごいな、と思います。
いい声かけをありがとうございます、とお伝えして、見送りました。

たくさんの子どもと家族が、病気があってもなくても、
ひとつひとつの体験を、大きくなる力に変えられるように。
おとなのひとりとして、微力ながらできることを探っていこうと思っています。

(小児科医 山口有紗)

山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
https://www.kidsrepublic.jp/pediatrics/today/detail/vol00.html



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<プロフィール>

小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。

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