きょうの診察室

Vol.51

強く、泣いたんです

泣き止まない子どもを前にするのは大変なことです。
一方で、なかには、強く泣くことができない子どももいます。

ある生まれつきの病気で、なかなか上手におっぱいを飲めず、体重の増えや発達もゆっくりな赤ちゃん。
入院からは脱しても、まだこまめなフォローが必要で、
ほとんど毎週、外来でお子さんとご家族に逢っています。

ひかえめなお母さんで、あまりたくさんのことをおっしゃらないですが、すごく優しい、愛があふれる方です。
ある日の診察のおわりに、お母さん、なにかほかに、なんでも、ありますか。と聞くと、

「あの、じつは。動画があって、、、」
うん、うん。
「あの、初めてすごく、強く、泣いたんです」

ぜひみせていただけますか、と、みせてもらいました。
これまでそのお子さんは、か弱く泣くことしかできなかったのですが、
なんと、おんぎゃ~と顔をぐちゃぐちゃにして、全力で泣いている!

5分近いその動画を、お母さんと、じーっとだまって、みていました。

我が子が強く泣き続けるところを、思わず、ひたすら撮り続けたお母さん。
その気持ちに想いをよせると、
感情的になってはいけないと思いつつもつい、
胸がいっぱいで、声がつまります。

言葉を失ってしまって、かろうじて、
「すごいですね、〇ちゃんの、生命力、、」
と、医学的でもなんでもないことを言って、
お母さんと握手をすることしかできませんでした。

いのちはほんとに奇跡のあつまり。
あたりまえ、はなんにもありません。

診察室でできることは本当にわずかです。
でも、子どもや家族が少しでも幸せでいられるように、
自分に与えられたことを考えつづけていきたいな、と思っています。

(小児科医 山口有紗)

山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
https://www.kidsrepublic.jp/pediatrics/today/detail/vol00.html



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<プロフィール>

小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。

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