大部屋に入院している子どもたちが、気がつくと互いに仲良くなっていることがあります。
朝の回診のとき、なにか聞いておきたいことはありますか、と尋ねると、ある子が、
「そうだんがあるんだけどー!」
どうぞ、とうながすと、
「あのさ、つぶにちょうせんしたいんだけど!」
なんのことかよくわからず、詳しく聞くと(お母さんも助けてくれました)、
どうやら同室で仲良くなった少しお兄さんのお友達が、
同じ薬を飲んでいることがわかったようです。
それで、彼は錠剤、自分は粉薬だから、錠剤にしてほしいと。
小児科では、錠剤が大きくて飲み込めないお子さんも多く、
量の調整の便利さから、小さい子には粉薬を選ぶことがよくあります。
大きくなってどちらもいけそうなときには、どっちがいいかお子さん自身に聞きますが、
なるほど、彼に、錠剤かぁぁぁ。
彼は薬が多いので、なかなか手強い注文です。
でも、彼のチャレンジの気持ち、だいじにしたい。
ご本人に、かなりつぶの数が多いこと、だからしんどいかもしれないこと、
でもやってみたかったら応援したいことを伝えて、お母さんとも相談。
「7つぶなら、いけるんじゃねー?(にやり)」
よし!とタッチをして、薬剤師さんと協力して、1日トライしてみました。
そして、飲めたんだなぁ、これが。
回診のときの、得意そうな満面の笑顔。
「こっちのほうが、にがくなかったよ!やってみてよかった!つぎもこれでっ!(にやり)」
いい顔すぎる、、、
お友達も、うれしそう。
子どもたちはどんな環境でも、自らに必要なことをともに学び、伝える力をもっているんだと、
また教えてもらいました。
(小児科医 山口有紗)
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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