きょうの診察室

Vol.41

タクシー代

大雨のある日。
女の子とお母さんが外来にやってきました。

こんな雨のなか、きてくれてありがとう。
ここまでどうやってきてくれた?
いつもは自転車だけど、きょうはタクシーで来てくれたんだそうです。

そのおうちは母子家庭です。
お母さんがお子さんのことをいろいろと心配していらっしゃり、ときどき相談にのっています。

女の子だけとお話の時間。
「いつも病院にくることは大変?」と尋ねます。

「ううん、わたしはそうでもないけど、、、」
うん?
「お母さんが大変だと思う」
そうか、、、
「お金のこととかね」
うん、そうなんだね。でも子どもは、病院のお金は、かからないから心配しなくてもいいんだよ。
「うん、でもね、タクシーに乗ったりするとね、お母さんが大変なんじゃないかって、心配になる」

その子のやさしさとまなざしにも、胸が打たれたし、
医療費だけのことしかあたまに浮かばなかった自分をとっても反省しました。

子どもは世界のことを、その目を大きく開いてほんとうによく見ています。
子どものまなざしで、その声に耳を傾けることで、気が付けることがたくさんあるなと、きょうも教えてもらいました。

(小児科医 山口有紗)

山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
https://www.kidsrepublic.jp/pediatrics/today/detail/vol00.html



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<プロフィール>

小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。

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