あるお子さんと初めてふたりでお話。
わたしは診察室の椅子に座っていて、その子は立って壁に背をつけ、宙をみながら左右にゆらゆら、ゆれています。
座る?とすすめたのですが、しーん、としたまま、ゆらゆら、ゆれています。
ふたりでそのまま、しばらく過ごすと、
あぁこのひとはゆれているのが落ち着くんだなぁ、とわかってきて、
わたしもちょっと離れた壁に背をつけ、ゆらゆら、ゆれてみます。
しーん。ゆら、ゆら。
しばらくするとその子が話し始めました。
話しているうちに椅子に座ったので、わたしも近くに座りました。
初めてでとっても緊張しながら、そばにいてくれたんだよね。
ふだん、椅子に座っている子どもたちとあたりまえのように話をしていたけれど、
きっとみんなその子なりの努力をして、わたしに合わせてそこにいてくれているんだな、と教えてもらいました。
いつも、合わせてもらってばかりだね。
ありがとう。その恩返しができるように、わたしも少し、がんばるよ。
(小児科医 山口有紗)
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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