きょうの診察室

Vol.37

おかあさんのいいところ

お母さんに尋ねます。「〇くんのいいところはどんなところですか?」
「うーーーん、、、やさしいところ、弟の面倒をみてくれるところ」
〇くんはにっとしてちょっとお母さんのほうを見ます。

つぎに〇くんに尋ねます。
「そうかあ、じゃあ〇くん、お母さんのいいところはどんなところですか?」

「やさしいところ!」

お母さん、照れて〇くんのほうをみて、
「ふふ、やさしいとこくらいしか、ないよね、、」

〇くんは即座に、
「まって、まだだよ」

「ごはんをつくってくれるところでしょ、みんなを守ってくれるところ」

そのご家庭はいろいろな困難の中で、
たしかにお母さんがとってもがんばって、家庭の安全を守っています。

お母さん、「そんな風に思ってたの?」と茶化して笑います。
ふたりは顔を見合わせて、部屋から出ていきました。

"お子さんのいいところ"を子どものいる前でご家族に伝えてもらうことはよくあると思うのですが、
わたしは最近、"ご家族のいいところ"も、ご家族のいる前で子ども自身に伝えていただくことがしばしばあります。
いろんな家族に接していて、その人なりにこんなにがんばっているご家族自身が、もっとほめられていいのに、と思うことが多かったからです。

"ほめるのがだいじ"。
ならば、子どもと家族が双方とも、大切な誰かにほめられてほっとしたり嬉しかったりする気持ちを実感しあえたらよりいいな、と思います。

お母さんにほめられている子どものはにかんだ笑顔はすごく素敵だし、
お母さんをほめている子どもの顔も、ほめられているお母さんの照れ隠しのおどけた顔も、わたしはとても好きです。

(小児科医 山口有紗)

山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
https://www.kidsrepublic.jp/pediatrics/today/detail/vol00.html



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<プロフィール>

小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。

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