子どもの発達や集団での様子が気になるとき、
お子さん自らが病院に行きたい、ということはあまり多くありません。
みんなそれぞれに、ご家族にいろんな声をかけられて、
診察室にやってきてくれます。
わたしはお子さんには、
きょうは●くんがお話したいことがあってきてくれたのか、
おうちの人が相談があって連れてきてくれたのか、
をたずねたあとに、
おうちのひとは、なんて言って●くんをここに連れてきてくれた?
と聞くことにしています。
子どもにとって、どんな想いで、どんなつもりで、
いまこの場所にたどり着いてくれたのかを、少しでも共有したいと思うからです。
ある女の子に、ご家族になんて言って連れてきてもらったかを聞いたとき、
彼女はこう答えてくれました。
「しょうがいがあるかを、しらべにきました」
わたしは切ない気持ちになって、
しょうがい、ってなんだろう、とたずねます。
「わるいところ」
障害というのは、その人の特徴と、社会の構造や環境の掛け合わせで、
どのくらい不便が生じるかということなのかなと感じています。
わたしたち大人にできることは、
子どもの特徴をいかに障害としてではなく、特長として生かすことができるかを、
構造や環境を調整しながら一緒に探っていくことなのではないかと思います。
その子には、
あなたの毎日が少しでも、
楽しかった、きょうもよかったなーってものになるように、
応援できたらいいなと思います、と伝えました。
病院に行く前のご家族の気持ちも、その子の想いも。
きっとちょっと、苦しかったんじゃないかな。
”きみの毎日が、さらに素敵になるような応援団に逢いに行くんだよ”
そう伝えたくなるような、医療であれたら、と身が引き締まる思いになりました。
(小児科医 山口有紗)
山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
https://www.kidsrepublic.jp/pediatrics/today/detail/vol00.html
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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