大きい病院で手術を受けたことのある男の子。
聴診器のもしもしで、すでに大泣きです。
「もしもしは痛くないでしょ!」とお母さんがおっしゃるので、
わたしは聞こえないふりをして、
「そっかー、痛い気がするよね、がんばってるんだよね」
と声をかけながら診察をします。
すると、お母さん、はっとして、
「そうか、”痛い気が”するのか、そうだね」
と男の子に話しかけ始めます。
男の子は泣いていて上の空。
でも、お母さんは膝の上にその子を抱いたまま、話し続けます。
「そうか、だからね、泣けるよね。痛い気がね。いっぱい痛い想いをしたもんね。お母さんも、その時は、泣けたよね。●くんが手術に行くときね、泣けたよね、、、」
痛い思い出があると、体が傷つかなくても、痛い気がする。
子どもが痛いと、お母さんも痛い気がする。
人間は想いを馳せることのできる生き物です。
目の前の親子が、また教えてくれました。
(小児科医 山口有紗)
山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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