きょうの診察室

Vol.33

さよならのうれしさ

きょうは、少し早く小さく産まれて、成長と発達のフォローをしている子とお母さんが外来にきました。
成長も発達もとても順調です。
一生けんめい、これからお買い物にいく話をしてくれます。

お母さんに、尋ねます。
「お母さん、ずいぶんいろいろあったと思うけれど、成長も発達も、いい感じですね。
定期受診、おしまいにしてもいいかな、つぎ、予約なしで、あとは困ったら相談、でもいいくらいかなと思っていますが、お母さんはどうでしょう」

いいことだけど、ほんとはわたし自身はちょっと、寂しい気持ちもしていました。
もう一回くらい予約、とおっしゃるかしら、なんて。

でもお母さん、それを聞くなりお子さんに向きなおり、
「Aちゃん!おわりだって!おわりだって!もう来なくていいって!!」
と抱きしめます。
Aちゃん、きょとんとしながらにっこり。

そうかぁ、と思いました。

ずーっと心配で、病院にきて、なにかを言われて、また心配で、病院にきて。
だんだん安心が増えていったって、やっぱり「ちいさくうまれた」痛みをずっと、感じていたのかもしれません。
それからやっと開放される。

おふたりと握手をして、さよならをしました。

医療にずっといると、ふと見えにくくなる、病院の位置づけ。
忘れずに、子どもと家族を応援したいです。

(小児科医 山口有紗)

山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
https://www.kidsrepublic.jp/pediatrics/today/detail/vol00.html



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<プロフィール>

小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。

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