診察室のおもちゃのひとつ。
蓋がしっかりしたびんにピンポン玉が入っています。
先輩の先生に教えていただいて、ピンポン玉を取り出したいけどうまく開けられない子の、
「あけて」を引き出すひとつの道具に使っています。
ある日、発達をみているお子さんの外来に、お兄ちゃんが一緒にきてくれました。
そこで、お兄ちゃんは「ねえこれなに」とびんに興味を示します。
「これはね、中のボールがほしくなったときに、
取り出せるかどうかみたり、取り出せなかったらお願いしてくれるかみたりするときに使うんだよ。」
その子にびんを渡すと、
ふーん、、、としばらく眺めて、びんの蓋を少しゆるめました。
「じゃあ、ゆるくしめておこうね」
と、妹にそのびんを渡します。
できるかどうか、お願いするかどうか、
ということではなくて、
"できにくいことを、できやすくして"渡してくれたお兄ちゃん。
妹が嬉しそうにそれを開け、お兄ちゃんもお母さんもにっこり。
わたしは息をのみ、胸がいっぱいになりました。
子どもの中にある力はすごい。
彼らは、多様なものこといのちがよりよく輝く方法について、
ほんとうによく知っています。
これからも、わたしたち大人に、どうかいろんなことを、教えてね。
いつもありがとう。
(小児科医 山口有紗)
山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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