入院している子どもたちは、病気に耐え、治療に耐え、慣れない食事に耐え、
よくなってきたら退屈や外遊びのなさに耐え、
なによりも、大好きな家族や友達にずっと逢えない孤独と不安に耐えながら、
毎日を過ごしています。
おとなであれば病気によってはある程度、
自分の置かれた状況とその見通しを予想することができるかもしれませんが、
「いまがすべて」の段階にある子どもにとっては、
永遠に続きそうな入院の環境はさらに過酷になることもあります。
だからこそ、その子どもの理解と発達の段階に応じて、
見通しを伝えることが大事だと思っています。
ある子のベッドサイドに行った時のこと。
あれ、枕もとの壁に、手作りのカレンダーが貼ってありました。
その子のお母さんは働いていて、面会に来られない日もあります。
カレンダーには、日付と曜日と、イベントごとにくわえて、
「あさしごと」など、お母さんの予定が書いてあります。
このカレンダーすごいね、と聞くと、
「おかあさんがつくったんだよ」とその子。
これ、あるとどんなことがいい?と聞くと、
「おかあさんがくるときがわかる。あと、いま、どのへんかなーってわかる」
よく見るとそのカレンダーは、わたしが入院時に説明をした、
おおまかな退院の目途の日付あたりで終わっています。
見通しを共有し、希望のかけらを伝えること。
それを目で見えるところに、いつもおいておくこと。
子どものそばで日々それを実践しているご家族に、ほんとに頭が下がります。
"いま、わたし、どのへんかな。"
おとなも子どもも、とっても大事ですね。
(小児科医 山口有紗)
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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