Aちゃんは長いこと入院している女の子。
とても優しい子で、となりのベッドにやってくる年下の子どもたちと仲良くなり、よく遊んでいます。
彼女だけ入院が長くて、ほかの子が無邪気に
「あたし、あした、退院だから!!」
と叫んでも、にこにこしながらそばにいます。
おとといも、Aちゃんが同室の子どもとオセロをしていたので、
「Aちゃんは本当に、めんどうみがいいね、すてきね」
と声をかけました。
するとAちゃん、すかさずに答えます。
「ううん、ただ遊んでるだけだよー」
はっとしました。
Aちゃんにとっては年齢や病気の垣根を超えて、だれが上でだれが面倒を見るとかではなく、
ただとなりにやってきた新しい友達と、自然に遊んでいただけなのかもしれません。
わたしはおとなの壁でレッテルをはって、
年上のAちゃんが、年下のほかの患者さんとよく遊んでくれている、
という構造を無意識に組み立てていたんだ!と思いました。
きょうはAちゃんの治療のための散歩に、
年下の患者さんが一緒につきそっていました。
子どもに教えられること、ばかりです。
みんな、いつもありがとうね。
(小児科医 山口有紗)
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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