学校に行くのが不安で、お母さんとばいばいできないお子さん。
お母さんがそこの横断歩道まで送っていくんだけれど、
それから先に、どうしても泣けてしまうのだそう。
ある日の外来で、ご家族が報告をしてくれました。
まだ泣けてしまうことも多いんです。でもね先生。
その子の登校チームのお友達が、泣けてしまうその子をみて、
いろんな声かけをしてくれたんだそうです。
「じゃあさ、おかあさんに、とうめいにんげんになってもらって、いっしょにがっこうにきてもらおうよ!」
「あとはさ、おかあさんのおかおのブローチをつくって、なふだのよこにいつもつけていたら、かなしくないよ!」
その子はそのアドバイスを受けて、お母さんの姿を胸にうかべ、お顔の手作りブローチを襟につけて登校するのだそうです。
まだ泣いちゃうんだけど、友達に恵まれているんだなってわかりました、とご家族。
弱いからわかること、弱いからみえる世界、弱いから感じるぬくもりが、たくさんあります。
強くなることも、いいかもしれない。
でも弱くてもいいこともあるね、って、子どもと家族はいつも教えてくれています。
(小児科医 山口有紗)
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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