プレママジャーナル

8週

出生前診断を考えるときに必ずわかっていてほしいこと

近年、出産前に胎児の異常があるかどうかを検査する「出生前診断」が普及しつつあります。ところが、検査についての適切な知識やきちんとした準備を持たずに、安易に出生前診断を行うことには多くの危険があります。
特に、非認可の悪質な医療機関等では、手軽さや年齢制限をしないことなどを売りにして、充分な説明もなく検査を行なっている場合さえあります。そのような施設で中途半端な結果を伝えられ、結果的に心も身体も深く傷ついてしまう方々が後を絶ちません。今回は、出生前診断を検討するときに、必ずわかっておいて欲しいことについて解説します。

■生まれつきの異常(先天性疾患)は3~5%の頻度で発生します

前提として、大小含めて、生まれた時点で何らかの疾患を持っている赤ちゃんは3〜5%いると考えられています。これを聞いて、多いと感じるでしょうか?少ないと思うでしょうか?
人の細胞の中にはそれぞれ遺伝情報を持った染色体が存在します。この染色体に異常(過不足や変異)があることが原因で起きる、代表的な先天性疾患がダウン症候群(21トリソミ―)です。染色体異常は先天性疾患の原因の4分の1程度を占めます。
染色体異常による先天性疾患には、他に18トリソミー、13トリソミーなどがあります。実際には、染色体異常による先天性疾患のうち8割程度がダウン症候群(21トリソミー)です。

■日本では主に3種類の検査法があり、それぞれに異なる特徴があります

出生前診断とは、妊娠中の胎児が何らかの疾患を持っているかどうか、検査をして診断することです。もともとの目的は、あらかじめ出生前に生まれつきの異常を診断しておくことで、「生まれた赤ちゃんがその瞬間から、より育ちやすい環境の準備を進めるため」に行われるものです。

出生前診断には、超音波検査などの画像を用いる方法と遺伝学的検査があります。そして、胎児の遺伝学的検査は、胎児に負担のある検査(侵襲的検査)と負担のない検査(非侵襲的検査)に分けられます。

1)画像検査(主に超音波検査)
2)遺伝学的検査
   i) 侵襲なし(母体採血など)
  ii) 侵襲あり(羊水検査など)

■確定的検査では、流産などのリスクが避けられない

胎児の染色体異常の可能性を評価する検査は、「診断を確定させるための検査かどうか」で大きく2種類に分けられます。

1.非確定的検査
母児への負担はほとんどありませんが、この検査だけでは疾患があるかどうか確定できない検査です。
Aの超音波検査(NT)では、胎児の首の後ろのむくみ(NT)などを測定して、異常の可能性を評価します。
Bの遺伝学的検査(侵襲なし)のうちの母体血マーカー検査(クアトロ検査など))では、お母さんの血液中の蛋白質濃度などを測定し、統計学的にその可能性を評価します。また、Bの遺伝学的検査(侵襲なし)のうちの、母体血胎児染色体検査(NIPT)は、非確定的検査に分類されますが、非確定的検査の中では最も高精度な検査です。

2. 確定的検査
非確定検査で異常がある可能性が通常より高いと判断された場合に、診断を確定させるために行うものです。C遺伝学的検査(侵襲あり)の絨毛染色体検査や羊水染色体検査が該当します。ただし、この方法は母児への負担(破水や出血、流産のリスク)が避けられません。

■何よりも大事なのは、まず遺伝カウンセリングです

遺伝カウンセリングとは、出生前検査に関する説明と、ご夫婦(原則、ご夫婦揃っての参加が病院より求められます)の思い、不安などを含めた相談を行うものです。
説明の内容は、胎児が疾患を持っている可能性、検査を行う意義、検査法の診断能力の限界、母体・胎児に対する危険性、合併症、検査結果判明後の対応などについてです。訓練を受けた遺伝専門職によって行われ、国も遺伝カウンセリングを受けることをとても強く勧めています。

この遺伝カウンセリングを通して、パートナーとの考え方に食い違いがないか、異常が見つかった場合にどうするかなど、きちんとお互いの考えを整理しましょう。そして、検査を受ける場合にも受けない場合にも、それを受け入れる気持ちの覚悟を持つことがとても大切です。

■もっと詳しく(1):母体血胎児染色体検査(NIPT)について

新型出生前診断法として近年注目を集めている検査法です。母体血から検査する方法で、日本では2013年4月から導入されました。これまでの検査とNIPTの決定的な違いは「採血という非常に負担の少ない検査で、胎児の染色体検査が100%にかなり近い精度で行える」という点です。
日本では、日本産科婦人科学会の指針により臨床研究として認定された施設でしか行えません(2018年3月現在)。
この検査は、染色体異常を「診断」するものではなくあくまでもその可能性を「検出」するもので、この検査で検出できるのは、21トリソミ―(ダウン症候群)、18トリソミー症候群、そして13トリソミー症候群の3つだけです。つまり、全ての染色体異常が検出できる検査ではなく、染色体異常症全体の2/3程度が対象になります。
NIPTの陽性的中率(検査が陽性となった妊婦さんが実際に染色体異常の児を妊娠している確率)は若い女性ほど低くなり、35歳で84%、30歳で68%となります。つまり、30歳でこの検査を受けたとしても、あまり正確なことがわからない可能性があるのです。一方で、陰性的中率(結果が陰性の場合に実際に染色体異常の児を妊娠していない確率)はどの年齢においても高く99.9%以上です。つまり、結果が陰性の場合は21トリソミ―(ダウン症候群)など染色体異常の児を妊娠している心配は100%に近い確率で否定されるため、羊水検査という侵襲的検査を受けないという選択が可能になるメリットがあります。
以上をまとめると、「NIPTは、羊水検査など侵襲的検査を受ける妊婦さんの数を減らすために利用できる検査」であり、これは諸外国でも同様の考えです。

■もっと詳しく(2):NIPTを受けられる施設

2018年1月26日現在、全国90施設で実施されています。中心的に取り組む共同研究組織であるNIPTコンソーシアムのホームページから実施施設が参照できます( http://www.nipt.jp/ )。
なお、2018年1月に、日本産科婦人科学会は、NIPTの本格的な実施への移行を検討すると発表しました。つまり臨床研究という形を無くし、受診できる施設を大幅に増やし、対象とする疾患や妊婦の年齢要件の緩和(対象年齢の引き下げ)も段階的に検討されることが予想されます。
また、NIPTコンソーシアムのウェブサイト( http://www.nipt.jp/botai_04.html )では、より詳しい出生前検査の比較表が確認できます。

今回は、近年急速に広まりつつある出生前診断について詳しく説明しました。
正確な知識をもとに、学会や国から推奨された手順を踏んで検査を進めていくことが何よりも重要です。また、最初からパートナーと一緒に考えていくことも大切になります。かけがえのない新しい命をどのように迎えていくか、考えてみましょうね。

産婦人科医 重見大介

<自己紹介>

「妊娠出産を誰もが明るく前向きに迎え、送れる社会」。
産婦人科の医療現場と、公衆衛生学の視点を通して、このような社会を実現する一助になることを、自身の目標としています。
キッズリパブリックから、皆さんのマタニティライフが少しでも安心で明るくなるよう、応援しています!

<略歴>

2010年 日本医科大学 卒業
2010-2012年 日本赤十字社医療センターで初期臨床研修(産婦人科プログラム)
2012-2017年 日本医科大学付属病院 産婦人科学教室- NICU(新生児集中治療室)、麻酔科を含め関連病院で産婦人科医として勤務
2017年4月 東京大学大学院公共健康医学専攻(SPH) 進学
2018年3月 同大学院卒業
2018年4月〜 東京大学大学院博士課程(医学部医学系研究科 臨床疫学・経済学教室)進学

<保有資格>

産婦人科専門医、公衆衛生学修士。
他に、NCPR(新生児蘇生法)インストラクター(Jコース)、検診マンモグラフィ読影認定(千葉県)。

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