産婦人科オンラインジャーナル

35週

最低限知っておいてほしい陣痛開始から入院後までの知っておくべきこと

いよいよ臨月も間近に迫ると、お産についての疑問や不安が頭に浮かんできますよね。陣痛ってどういうもの?破水っていつ起きるの?入院の時の注意点は?今回は、お産の始まりから入院後の注意点の中でも「これだけは知っておいてほしい」ことを解説します。

■出産は「陣痛開始」が始まりです

お産とは出産のことですが、「陣痛の始まりが出産の開始」と決められています。そして、陣痛とは「10分以内に規則的に繰り返す子宮収縮」であり、これを本陣痛と呼んでいます。
本陣痛の前に、「痛いけど不規則だったり強弱がある」陣痛のような子宮収縮が起きてくるのですが、これは前駆陣痛または偽陣痛と呼ばれるもので、まだ分娩開始の合図ではありません。つまり、まだ病院を受診しなくてもいい段階です。なお、おしるし(出血混じりの粘稠なおりもの)も本陣痛とは無関係です。

■出産には3つの段階があります

出産の経過は大きく3つの時期に分けられます。

・分娩第1期(開口期):規則的な陣痛開始から子宮口(子宮頸管という子宮の出口部分)全開まで
・分娩第2期(娩出期):子宮口全開から赤ちゃんが産まれるまで
・分娩第3期(後産期):赤ちゃんが生まれた後から胎盤が出るまで

詳しく解説します。第1期は、本格的な陣痛から徐々に子宮口が開いていきます。子宮口が全部開く(全開)と約10cmまで広がりますが、一般的には5-6cmまで少しずつ開いていきます。そして、5-6cmを越えると分娩の進行が加速し、さらに陣痛も強まってきます。陣痛のたびに強い痛みが繰り返されることになりますが、子宮口が全開になるまではいきんではいけません。助産師さんのアドバイスをもとに、上手に「逃す」ことが重要です。

子宮口が全開し第2期になると、いよいよ分娩も終盤に差し掛かります。赤ちゃんを包む膜が破れて羊水が流れ出る破水は、子宮口の全開より前に起きる方もいれば、後に起きる方もいます。

■注意点1)規則的ではなく「持続的な強い痛み」は要注意

陣痛とは異なり、持続的で強い痛みや多量の性器出血は危険なサインである場合があります。最も怖いのは胎盤早期剥離といって、胎盤が先に子宮内で剥がれてしまう状態です。これは母子ともに命の危険を伴うほどの救急疾患です。持続的で強い痛みや多量の性器出血があれば、すぐに病院へ連絡しましょう。

■注意点2)陣痛開始前に破水かなと感じたら必ず病院へ連絡を

通常、陣痛開始後に起こる破水ですが、陣痛開始前に起きてしまうと注意が必要です。前期破水と呼ばれ、子宮内への細菌感染や、へその緒が先に出てきてしまうケースがありますので、破水を疑うサインがあったら必ず病院へ連絡しましょう。

■注意点3)子宮口全開までは「逃し」がとても重要

子宮口が全開するまでは、ひたすら痛みを逃し、いきむのを我慢しましょうと言われます。こんなに辛いのになぜ?と思われるのも当然ですが、これには大きな理由があります。まず、この段階ではいきんでも力がうまく伝わらずにお産の進行を早める効果はないと考えられています。つまり、無理に体力を消耗してしまうことになってしまうのです。次に、長時間いきむことで腟から外陰部にかけてむくみが出てしまい、かえって赤ちゃんが降りてくるのを妨げることになりかねません。最後に、子宮口(子宮頸管)に無理な圧力が加わることで、子宮頸管裂傷が発生するリスクを上昇させてしまいます。大量出血にも繋がる危険な合併症ですので、無理にいきまず、自然なペースでお産を進めることが大切です。

■もっと詳しく(1): 陣痛がいつ来るのかは神様しかわからない

医学的に、正期産と呼ばれる「正常な出産時期」は妊娠37週0日~妊娠41週6日までで、予定日とは40週0日を意味します。妊娠37週0日を超えていれば、赤ちゃんの皮膚や臓器は十分に成熟していますので、いつ産まれても問題ありません。ただ、陣痛が来るのは予定日ちょうどとは限らないため、「陣痛がいつ来るか」は医師でも予測が困難なのが実際のところです。日本の過去のデータをみると、妊娠37週以降での出産のうち、妊娠37-38週台での出産が43%、妊娠39-40週台が49%、41週以降が8%程度で、ばらついていることがわかります。準備をしっかりしておいて、焦らずに陣痛が来るのを待ちましょう。

■もっと詳しく(2):分娩にかかる時間の目安

初めての出産(初産婦)と、2人目以降の出産(経産婦)で異なってきます。初産婦では約15~16時間、経産婦では約6~8時間が目安と考えられていますが、一方で「正常範囲と考えられる分娩時間」の目安は初産婦で30時間、経産婦で15時間とされています。これを超えた、または超えてしまうと判断された場合には遷延分娩と呼ばれ、何らかの医学的介入(陣痛促進剤の使用や吸引分娩/鉗子分娩といった器械分娩など)が検討されます。

今回は、いよいよ出産が間近にせまってきた皆さまへ、陣痛から出産の流れについて詳しく書きました。ご自身で理解しておくのはもちろん、パートナーにもきちんと理解してもらい、いざというときに焦らず対応できるよう、準備しておきましょうね。

■参考文献

・周産期委員会報告資料. (日本産科婦人科学会)

産婦人科医 重見大介

<自己紹介>

「妊娠出産を誰もが明るく前向きに迎え、送れる社会」。
産婦人科の医療現場と、公衆衛生学の視点を通して、このような社会を実現する一助になることを、自身の目標としています。
キッズリパブリックから、皆さんのマタニティライフが少しでも安心で明るくなるよう、応援しています!

<略歴>

2010年 日本医科大学 卒業
2010-2012年 日本赤十字社医療センターで初期臨床研修(産婦人科プログラム)
2012-2017年 日本医科大学付属病院 産婦人科学教室- NICU(新生児集中治療室)、麻酔科を含め関連病院で産婦人科医として勤務
2017年4月 東京大学大学院公共健康医学専攻(SPH) 進学
2018年3月 同大学院卒業
2018年4月~ 東京大学大学院博士課程(医学部医学系研究科 臨床疫学・経済学教室)進学

<保有資格>

産婦人科専門医、公衆衛生学修士。
他に、NCPR(新生児蘇生法)インストラクター(Jコース)、検診マンモグラフィ読影認定(千葉県)。

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