「妊娠中から尿漏れが始まった」「産後も尿漏れでナプキンが手放せない」というお悩みを聞くことがよくあります。ある報告では産後3人に1人は尿漏れに悩んでいるとも言われ、決して珍しいことではないのです。
ここでは、妊娠出産を機に尿漏れが起こりやすくなる理由と対策をお伝えします。
■なぜ妊産婦は尿漏れしやすい?
「骨盤底筋」という言葉を聞いたことはありますか?骨盤の底でハンモックのように、子宮や膀胱、腸を下から支えてくれている筋肉の集まりです。この骨盤底筋は、尿道の出口が勝手に開かないよう無意識のうちに調整してくれています。
妊娠すると、大きくなった子宮によって骨盤底筋が圧迫されるので、くしゃみや咳をした時、運動をした時などに尿漏れすることがあります(腹圧性尿失禁)。また、お産で骨盤底筋がダメージを受けたり神経が圧迫されたりすると、産後にも尿失禁が起こりやすくなります。
■尿漏れは妊娠中からの対策で予防できます
妊娠中や産後に起こりやすい尿漏れの対策として、妊娠中から骨盤底筋を鍛えると尿漏れ予防効果があることがわかってきました。
これまで行われた研究では、妊娠中に骨盤底筋運動を行ったグループでは、行わなかったグループと比べ妊娠後期の尿漏れが約60%少なかったという報告があります。また、産後3-6か月での尿漏れが約30%少なかったという報告もあります。
妊娠中に骨盤底筋運動を行うことで、妊娠後期や産後の尿漏れを減らせるかもしれません。
■尿もれを予防する「骨盤底筋運動」の方法
骨盤底筋運動の具体的な方法をご紹介します。
【1】息を吐きながら、骨盤底筋を5~10秒間かけて締める。
(具体的には、お尻の筋肉に力を入れ、肛門をキュッと締めます。下着の上から肛門の辺りの手を当ててみると、力が入っているかどうかわかりやすいです。)
【2】ゆっくり緩める(自然に息が吸えます)
【3】締める・緩めるという1と2の運動を10回行い、数分間の休憩をはさんで3セット繰り返す。一日2回、計6セット行う。
立っているとき、椅子に座っているとき、横になっているとき、どんな姿勢の時でも構いません。それ以外に、咳やくしゃみが出る時にも骨盤底筋を締めます。これを数か月単位で実施した場合に効果がみられていますので、一朝一夕ではなく、継続してトレーニングすることがポイントです。
いかがでしたか?
産後からでなく妊娠中からできる骨盤底筋運動で、尿漏れが起こらないような身体づくりを始めてみましょう。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(助産師 中村早希)
・Obstetric practice and the prevalence of urinary incontinence three months after delivery. Br J Obstet Gynaecol. 1996 Feb;103(2):154-61.
・ACOG FAQ. Pelvic Support Problems.
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