小児科オンラインジャーナル

2022.01.05

突然子どもの腕が動かなくなりました!~肘内障の原因と対応

小児科外来ではよく、「子どもの腕が突然動かなくなりました」とご相談を受けます。そのような時、お子さんは片方の腕を曲げた状態で、動かそうとしても動かすことができず、診察の結果、多くの場合「肘内障(ちゅうないしょう)」の診断となります。今回はその肘内障に関して説明します。

■肘内障は肘(ひじ)の骨が抜けかけた状態です

肘内障とは5歳くらいまでのお子さんによく起こる、肘(ひじ)の関節が亜脱臼(肘の骨が関節から抜けかかってしまう)した状態です。

この年齢のお子さんの肘の関節はとても柔らかいため、腕を強くひっぱってしまうことが原因で起こります。大人がお子さんの手を引っ張って持ち上げたり、お子さんの手を持ってぶらぶらと揺らしたりする時に肘内障はよく起こります。また、腕を伸ばした状態で転んだりしても、肘内障になることがあります。

■腫れはありませんが、腕を全く動かせません

肘内障で肘が腫れることはありませんが、お子さんは腕が動いたりすると、痛みを訴えたり泣いたりします。通常、お子さんは肘内障となった腕を自分の脇の方へ近づけて、肘を少し曲げた状態で固定し、手を動かそうとはしません。もし誰かがその腕をまっすぐにしようとしたら、痛みでそれを拒否します。

肘以外の関節は全く問題なく動かせますが、肘の痛みへの恐怖であまり動かさないことが多いです。こういった症状が見られたら、肘内障の可能性があるため、小児科や整形外科など整復(ずれた骨を戻すこと)ができる医療機関を受診してください。

■肘内障は整復で元に戻ります

診断は基本的には問診と診察だけで済むことが多いです。ただし、骨折や脱臼でも肘の痛みを訴え、腕を動かせない場合などでは、レントゲン撮影などで確認することもあります。

肘内障と診断された場合は、外来のその場で医師による徒手整復術(としゅせいふくじゅつ、腕を優しく回しながら肘を曲げることで、肘の骨を元の場所に戻すこと)が行われます。整復は麻酔や痛み止めなどを必要とはせず、数秒で終了することが多いです。

骨が元に戻っていればすぐに、痛みの表情はなくなり、数分以内には自ら普段通りに腕を動かし始めます。

肘内障の直後は再発しやすいため、お子さんの手や腕を引っ張らないように気をつけてください。整復が遅れた場合は三角巾などで腕を安静にさせることもあります。

小児科オンラインはこれからもお子さんに関わる問題を解決するために情報を発信していきます。
(小児科医 田中俊之)



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