食物アレルギーの診断には、様々な検査が行われます。血液検査がよく知られている検査ですが、同時によく誤解されている検査でもあります。
今回は代表的な検査をご紹介するとともに、正しい解釈の仕方についてお伝えします。
■1. 血液検査はあくまでも参考に
血液検査では主に食べ物の特異的IgEの値を調べます。この値が上がっていることは、「その食べ物に敏感になっていること(医学的には感作していると言います)」を意味します。ここで最も注意しなければならない点は、「感作≠食物アレルギー」ということです。
値が少し上がっているだけで「食物アレルギーなのでこの食べ物を除去しましょう」となっている場合がよくあるようですが、値が上がっていても実際にその食べ物を食べて何の症状も出ないのであれば、除去をする必要は全くありません。値が高くとも問題なく食べられるお子さんはたくさんいます。
■2. 「念のため」の血液検査はむしろお子さんに悪影響です
「症状はないけど念のため調べたい」というのは食べ物の過剰な除去につながります。ひいてはお子さんの食生活と栄養に悪影響を及ぼすため、おすすめできません。あくまでも実際に食べて症状があった上で検査すべきです。
また、特異的IgGという特異的IgEとは別の項目が一部では調べられているようですが、こちらは食物アレルギーでなくても値が上がります。そのため診断の参考にはなりませんし、アレルギー学会でも推奨していませんのでご注意ください。
■3. 皮膚検査もあくまで参考に
皮膚検査は、いくつか種類がありますが、主に「プリックテスト」が行われます。これは、アレルギーが疑われる食べ物の成分を専用の針につけて少し皮膚に押しつける、という検査です。押しつけた部分が赤くなり蚊に刺されたように膨らむかどうかを確認します。これもあくまで参考に行う検査で、少し反応したからといってその食べ物を食べられないわけではありません。
■4. 正しく診断できるのは食物負荷試験だけです
食物アレルギーかどうかを診断する唯一の方法は食物負荷試験であると言っていいと思います。これまでにお伝えした血液検査、皮膚検査はあくまで「参考」で、確定するのは食物負荷試験で陽性であった場合のみです。主治医がお子さんの状況をふまえて、疑いのある食べ物を適切な量だけ実際に食べてもらいます。それで症状が出ると、陽性と判断され、はじめて食物アレルギーの診断になります。そして診断後に適切な食べ物の除去の指導が行われます。
食物アレルギーは実際に食べて症状が出てはじめて診断されます。検査は、正しく行い、判断されなければ、不必要な食べ物の除去へとつながり、お子さんの食生活を著しく制限してしまうことになりますので注意しましょう。
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(小児科医 千葉剛史)
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