赤ちゃんが熱を出したら尿路感染症が心配って言われたけど、尿路って何?尿路感染症って何が起きているの?今回はあまり聞き慣れないかもしれない「尿路感染症」についてご紹介します。
【1. 尿路とは腎臓から尿道までの尿の通り道です】
私たちは小さい赤ちゃんから大人までみんな毎日尿がでますよね。尿がどうやって、何のためにできているか知っていますか?
私たちの尿は腎臓という臓器で作られています。腎臓はそらまめのような形の臓器で、腰のあたりに左右2個あります。
私たちは毎日飲んだり食べたり、体の細胞や筋肉が作って壊れてを繰り返すことで、体の中に余分な水分や老廃物がたまります。血液中の余分な水分や老廃物をろ過して、いらないものを尿として外に捨てるのが腎臓の主な働きです。 腎臓からろ過されてできた尿は尿管という細い管を通って、おなかの下のほうにある膀胱という袋にたまります。ある程度尿がたまると膀胱が収縮し、尿道をとおって尿は体の外にでます。
尿路とはこの腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿の通り道のことです。
【2. 尿路感染症とは尿路のどこかで菌が増殖して炎症が起きた状態です】
私たちの尿の出口の周りには、正常でも腸や皮膚に常に住んでいる菌がたくさんいます。一方で腎臓から作られ膀胱にたまっている尿はきれいで菌はいません。普通は尿が腎臓から膀胱、尿道まで一方通行にしか流れないため、菌は洗い流されて膀胱や腎臓にたどりつくことはありません。しかし、たまたま菌が膀胱や腎臓まであがってしまい、そこで繁殖してしまうと、炎症が起こります。
膀胱で菌が繁殖してしまっているのを膀胱炎、さらに腎臓の近くまで菌があがって繁殖しまったのを腎盂腎炎(じんうじんえん)といいます。膀胱炎と腎盂腎炎をあわせて尿路感染症といいます。
膀胱炎では熱はなく、尿をするときの違和感や、尿の回数が増えるなどの症状がみられます。膀胱炎は成人女性に多いので、ご存知の方がいらっしゃるかもしれませんね。
菌がもっと体の奥まで入り込んで腎盂腎炎(じんうじんえん)にまで至ると高熱がでて、腰の痛みがでることがあります。
しかし、小さなお子さんの場合は熱以外の症状があまりないことがほとんどです。熱だけでなんとなく不機嫌だったり、ミルクの飲みが悪くなったりと、症状がはっきりしません。
このため、小児科では原因のよくわからない熱がみられたときには尿検査をして、腎盂腎炎ではないか確認しています。
【3. 尿路感染症になってしまったら多くは入院で抗生剤の点滴をします】
尿路感染症は細菌やウイルス、カビなどさまざまな病原体が原因となりますが、ほとんどが細菌でそれも大腸菌がもっとも多いとされています。
膀胱炎だけであれば水分摂取を多くするだけでも菌が洗い流されて治ることが多いですが、抗生剤を飲んで治療を行うこともあります。
腎盂腎炎(じんうじんえん)にまでなってしまったときには入院で抗生剤の点滴による治療が必要です。
また、腎盂腎炎(じんうじんえん)をくりかえすときには生まれつき膀胱から尿管に尿が逆流してしまう膀胱尿管逆流があることがあります。このため、逆流があるかどうかの検査をしたり、逆流がある場合には尿路感染症を予防するために少量の抗菌薬を毎晩飲んだりすることがあります。
小児科オンラインはこれからもお子さんの腎臓、感染症に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。
(小児科医 佐藤舞)
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