小児科オンラインジャーナル

2018.01.01

発達理論から考える、イヤイヤ期と向き合うコツ

イヤイヤ期、とうとう来たか…

聞いてはいたけれど、こっちがイヤ!になってしまいそう。

今回はそんなイヤイヤ期をちょっと前向きにとらえるコツについて、子どもの発達の視点からお伝えします。

(本記事は2022年2月21日に一部表記を修正しました。)

■生後半年くらいまでの赤ちゃんと養育者は「ふたりでひとつ」

生後数週間、赤ちゃんは主な養育者に絶対的に依存していて、自分と外の世界のさかいめがまだはっきりとしていません。まさに「ふたりでひとつ」という状態です。

その後、生後2か月を過ぎると、少しずつ自分の内部と外部が別のものだと気づき始めます。この頃から、とくによく世話をしてくれる人のイメージを抱けるようになり、主な養育者との共生の関係の中で、ほほえみあいやスキンシップを楽しむことが可能になっていきます。

■2-3歳ごろまでの子どもと「安全基地」としての養育者

生後5か月ごろから2-3歳くらいのあいだ、子どもは少しずつ、自分と養育者は違う人間なのだということに気がつきます。

同時にこの時期には多くの子どもが、自分で移動することや言葉でコミュニケーションをすることが可能になります。そこで、養育者とぴったり、から一歩進み、そこを「安全基地」として、ちょっと外の世界に出かけて行くようになるのです。

最初は緊張していても、子どもが振り向きながら少しずつ自分から離れていき、何かあると号泣して戻ってきて、ちょっと落ち着いてまた離れていく、ということがあるかもしれません。このときにその大人がいつも変わらずに、エネルギー補給基地としてそこで待っていてくれること。それが、「ひとりの人間」として社会に出ていく小さな一歩を踏み出すこの時期に、とても大きな意味を持つのです。

■イヤイヤを通して子どもが表現していることは?

こうした「安全基地」とそれを支える関係性ができていると、2歳ごろから一次反抗期、いわゆる「イヤイヤ期」がやってきます。

自分でなんでもやりたい気持ちと、それがうまくいかないもどかしさ、さらにその葛藤を言葉にできないことが、安全基地での発散という形で表現されます。自己主張のバリエーションも発達途上の子どもにとっては、「イヤ!」「やらない!」「ちがう!」「ギャー!」が、その表現の形になっているのです。

■イヤイヤ期の声かけの3つのポイント

イヤイヤ期かなぁと思ったら、まずはこれまでの子どもと自分との関係性の中で「安全基地」ができているのだな、と、ご自身を褒めてあげてほしいと思います。とはいえ日々のイヤイヤは大人にとってもとても大変なもの。関わりのコツをいくつかお伝えします。

1.「イヤ!」を言葉で代弁する

今こそ、「イヤ!」以外の表現手段を学ぶチャンスです。「やりたかったね」「悔しかったね」「またできたらいいね」などと、子どもが言いたかったであろうことを想像して穏やかに声にしてみましょう。(「ちがう!」と言われたら、「違ったんだね」と何度か挑戦しましょう。)

2.「自分で」ができる仕掛けをつくる

この時期には自分でやりたい気持ちが強く、その失敗が「イヤ」につながることもよくあります。失敗は悪いことではありませんが、小さな成功体験は子どもの成長の糧です。例えば、靴が自分で履けるようにかかとに引っ張る布をつけたり、割れても大丈夫なお皿でお手伝いをお願いしたりするなど、子どもが自分でできた!と思うことが増えると、ベースの気持ちが安定します。できたときのポジティブな声かけも忘れずに!

3. どうしようもないときにはその場を離れる

イヤ!が高じてかんしゃくを起こしている場合、その場で子どもを諭したり、交渉したりしてもうまくいかないことが多いです。代わりのものや別のもので気持ちが切り替えられないときには、可能であれば場所を変えて、きっかけから離れましょう。

イヤ!が続くと、「わたしだってイヤだと言いたい!」という気持ちになることも多いと思います。ご家族もしんどくなるのは当然のことです。いつも寄り添えなくても大丈夫。大きな声や手をあげそうになったときには、子どもの安全を確認して、そっとその場を離れ、大きく息を吐き、普段がんばっているご自身を労ってあげてくださいね。

また、明らかなイヤイヤ期がないお子さんももちろんいます。ひとりひとり、安全基地の確認や社会への踏み出し方はユニークです。イヤイヤしないけど、新しいことへの挑戦やコミュニケーションの方法が変わってきたかな?というところに注目すると、新しい発見があるかもしれません。

小児科オンラインはこれからもお母さんの不安に寄り添えるように情報を発信していきます。
(小児科医 山口有紗)



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