小児科オンラインジャーナル

2017.12.04

産後早期の保湿がアトピー性皮膚炎の予防につながる

アトピー性皮膚炎は、長期間皮膚がかゆく荒れる病気です。
ただ皮膚が荒れるだけでなく、食物アレルギーのリスクにもなるため、アトピー性皮膚炎になったら、そのケアには十分注意しなければなりません。

今回はそのアトピー性皮膚炎の予防につながる方法のひとつをご紹介します。

【毎日「全身に保湿剤」を塗ることがアトピー性皮膚炎の発症リスクを減らす】

両親や兄弟がアトピー性皮膚炎だったことのある、アトピー性皮膚炎のリスクが高い赤ちゃんに、生後1週目から半年間1日1回保湿剤(2e[ドゥーエ])を全身に塗るという研究が2014年に行われました。
その結果、全身に保湿剤を塗った赤ちゃんは、乾燥した部分だけにワセリンを塗った赤ちゃんよりも、3割以上アトピー性皮膚炎を発症しにくかったのです。

(参考文献:J Allergy Clin Immunol. 2014 Oct;134(4):824ー830.)

【乾燥に気づく前に保湿剤を塗ることが重要】

乾燥している部分にだけワセリンを塗るよりも、乾燥しているかどうかにかかわらず全身に保湿剤を塗った方が、アトピー性皮膚炎の予防につながりました。
つまり、乾燥に気づく前に保湿剤を塗ることが重要そうです。
したがって、毎日「全身に」保湿剤を塗ることがおすすめです。

ただ、ここ1-2年でヨーロッパから「保湿剤を毎日塗ってもアトピー性皮膚炎を予防できない」というデータも出てきています(BEEP study、PreventADALL study)。結果だけを見ると確かに「効果がない」ということになりますが、先に述べた研究と介入の仕方(保湿剤の選び方や塗り方)が異なっていたり、研究に参加した子どもたちの背景を適切に評価できていない可能性などを実は含んでいます。例えば、「塗布したものがワセリンのような保湿成分を含んでいない保湿剤だった、またはそもそも保湿剤ではなかった」、「保湿剤を本当に正しく塗っていたか不明である」、といった点を考慮しなければなりません。

はじめに記載した研究で、効果があるとされたのは2e[ドゥーエ]という市販の保湿剤で保湿成分を含んだものでした。ですので、現時点(2020年5月時点)での仮説としては「保湿成分を含んでないものは塗っても予防効果がなさそう」、「保湿成分を含んだものを毎日塗っていると予防効果がある可能性がある」などが言えそうです。

まだ結論は出ていませんがいずれにしても、赤ちゃんに保湿剤を塗ること自体にはまったく害はなく、肌がすべすべになります。さらにアトピー性皮膚炎も予防できる可能性があるのであれば一石二鳥ですね。

小児科オンラインはこれからもお子さんのアレルギー・皮膚に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。
(小児科医 千葉剛史)



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