子どもとご家族にとって、病気になって受診すること、あるいは処置を受けたり入院したりすることは、とてもチャレンジングな出来事だと思います。
もちろん、病気になるのは嬉しいことではないけれど、病院での時間をよりよく乗り切ることで、子どもやご家族にとって、受診が嫌な体験ばかりではなく、少しでも前向きな時間になるといいなと、私たち小児科医は願っています。
【1. 子どもの力を引き出す考え方「チャイルド・ライフ」】
病気があってもなくても、子どもは子どもとして、意見を聞いてもらったり、発言したり、自分の病気や治療について知ったり、助けを求めたりする権利があります。
一番身近な存在であるご家族が、ちょっとこころの片隅で、こうしたことを念頭に置いた声かけをするだけで、子どもは本当に安心し、診察や治療に協力してくれるようになります。
子どもは潜在的な生きる力と適応力のある存在であり、自分に必要なことは、どの年代の子どもであっても、どんなに泣きわめいていても、実はちゃんとわかっています。そして、納得すれば彼らなりのやり方で一生懸命協力してくれる姿に、私たちはいつも驚かされます。
こうした子どもの力を引き出す考え方のひとつに、「チャイルド・ライフ」というものがあります。子どもや、家族が病気である子どもを、病気の有無にかかわらずひとりの人間として尊重し、子どもらしい時間を過ごすことができるようにするために、周囲はどんなことができるか、というのがそのエッセンスです。
チャイルドライフスペシャリスト、ホスピタルプレイスペシャリスト、子ども療養支援士、といった専門資格もあり、ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、ご家族にも今日から取り入れられる声かけや関わりのヒントも、実はたくさんあるのです。
【2. 声かけのヒント「どっちがいい?」】
療養中の子ども、病気になった子どもは、往々にして受け身になりがちです。よく分からないまま、あっちに連れていかれ、処置をされ、薬を与えられ、、、子どもは自分のからだのことであっても自分では選択することができず、拒否して泣いては怒られるので、体調が悪いうえに、自信まで失ってしまいます。
そこで、選択可能な範囲で、子ども自身に選んでもらう「どっちがいい?」という声かけをしてみましょう。
たとえば、病院に行く前、子どもが嫌がっていたら、「どっちのリュックでいく?」「お守りに、アンパンマンとスティッチどっちもっていく?」と選んでもらう。あるいは、診察室での待ち時間が不安であれば、おうちから、「待っている間の本、いっこだけ選んでいこうか」と声をかける。診察室では、「ママのお膝に座る?ひとりで座る?」「粒のお薬と、粉のお薬、どっちにする?」(私たちも、協力します!)マスクを嫌がるなら柄つきのものを一緒に買いに行って、本人に選んでもらうのもいいかもしれません。
このように、「病気になっても、どちらか選べるし、自分の大好きな大人がその機会をちゃんと保証してくれるんだ!」とわかることは、子どもにとっては、非常に大きな勇気になります。子どもたちはまだ発達の途上であり、ある出来事が普遍的に起こることだと感じることもあります。病気だから仕方ない、のではなく、病気の時だからこそ、それでも子ども自身が自分のことを決めていいのだと後押しすることが大切なのです。
小児科オンラインはこれからもお子さんの受診がよりポジティブな体験になるように情報を発信していきます。
(小児科医 山口有紗)
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