赤ちゃんが飲む人工乳(以下、人工乳=ミルク)の量が適切かどうかは、ミルクで育てる保護者の方にとって気になるポイントです。人工乳(ミルク)の缶には赤ちゃんに与えるミルクの量の目安が書いてありますが、我が子がその通りの量を哺乳しないと、途端に不安になりますよね。
■成長・発達に個人差があるように哺乳量にも個人差があります
お子さんは日々刻々と成長していて、体のサイズが大きくなるだけでなく、全ての臓器が刻々と発達しています。
目に見える体のサイズや体重の数字はわかりやすいポイントですが、それ以外にも、赤ちゃんの発達にはミルクを哺乳して消化して自分の栄養にする力、睡眠リズムが徐々についてまとまった時間寝る力、思いを伝えるために全身を使って大きな声で泣く力、なども立派な発達のサインです。
抱っこされていないと気が付いて泣いてしまう、いわゆる「背中スイッチ」というのも、お子さんに知恵がついてきて発達した所以になります。
もう少し大きくなってくると、両親と他人を見分け、両親に抱っこされているのが一番安心で心地よいとそんな顔をするようにもなってきます。
そういった日々刻々と変化する成長や発達はお子さんによって個人差があり、一度に補乳するのにかかる時間やパワー、それを消化する力の発達にも個人差があります。
■哺乳が少ないと感じたら回数を増やしてみましょう
一度にたくさん飲めないタイプのお子さんは、少ない量を頻回に欲しがります。
一度にたくさん飲めないことにも理由があります。体格自体がまだ小さいこと、空気を同時に飲んでしまうこと、吐き戻しが多いことなどです。何より、飲んでいる途中で気持ちよくなってしまって哺乳より眠気が勝ってしまうお子さんは、缶に記載の量を飲み切らないこともあります。こういったお子さんは、哺乳の回数を増やし、体が成長・発達するのを待ちましょう。回数が多いことは大変ですが、時間をかけると必ず成長してきます。
■哺乳が多すぎると感じたら気分転換のお散歩がおすすめです
いくらでも飲むんじゃないか?というほどガッツがある飲み方をする子がいます。その場合も1日1リットルは超えないようにしましょう。
では、飲んでも飲んでも足りなさそうに泣く赤ちゃんにはどうしたら良いでしょうか?
ガッツのあるタイプは、周りに興味津々です。新生児期のようにリビングで横になって天井ばかりしか見えないと、物足りなくなってきます。
そんなガッツのあるお子さんは日中お散歩に出て親子ともに気分転換することをおすすめします。季節によって異なる外の空気や風を直接肌で感じたり、車の音や鳥の声、通り過ぎる人の雰囲気など、屋外の体験は全て赤ちゃんにとって初体験で新鮮です。
全てが良い刺激になって、哺乳しなくても赤ちゃんの気持ちが満足したり穏やかな気分になったり、睡眠リズムの確立にも役立ちます。
缶のミルク量の記載はあくまでも平均です。正解でもなんでもありません。お子さんの哺乳量がそれより、少なくても多くても、目の前の我が子がどのくらい要求しているのかに焦点を当てましょう。
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(小児科医 梶原久美子)
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